『赤ちゃん言葉気味なんだけど。』



上のは数年前に付き合っていた彼女と性交していた時に言われた言葉なんだけど、あっ、ええと性交っていうのは男と女が子孫を残すために行う行為でお互い裸になって股の部分にあるそれぞれの性器と呼ばれる体の一部を音声出力用のピンジャックみたいに差し込んだり抜いたりすることです。
時に激しく時に優しく疲労困憊の時には手マンの最中に居眠り(男側)したりする不思議な行為ですね。ってそれは俺のことじゃないか!!



んで、上記の言葉なんですがね。言われたんですよ。数年前に付き合ってた彼女と生セックスしている時に言われたんですよ。
『赤ちゃん言葉気味なんだけど。』
不思議だったのが、それ以上言葉が続かなかったんですよ。
『赤ちゃん言葉気味なんだけど。』で完結しているらしい。『・・・気味なんだけど、○×△だね。』という感じにはならないらしい。ただただ『赤ちゃん言葉気味』というのを伝えたかったらしい。俺はなんて言えばいいのだろうか。日本語がおかしくないかい?いや、自分も文章を書いていて、自分に対して文章が下手だなと思う。しかし、だが、『話す』ということはそんなにお粗末にしていいものだろうか?言葉を送信するだけでは意味がない。受信もしなければ話していることにはなっていない。壊れかけのレディオではないのだから。
もう別れたが、当時の俺は彼女を心の底から愛していた。『食べちゃいたいくらいに好き』という言葉の意味がわからなかったけど、彼女と付き合ってそれがわかった。

「赤ちゃん言葉気味なんだけど。」
ほんのちょっと、いや結構な感じで怒りを込めて言われた言葉。ピストン運動の動きが止まる。俺は耳を傾けていたんだ。俺は彼女と話したかったんだ。さぁ次の言葉はなに?君が、次に選ぶ言葉はなんだよ!
いくら待っても、次の言葉が出てこなかった。
怒りをあらわにして俺の部屋を出ていく彼女。ぼさぼさの髪をそのままに振り向き、何か言いかけた。

________だが何も出てこなかった。

そして
「赤ちゃん言葉気味なんだけど。」という言葉は
心の底から愛した彼女の最後の言葉になってしまった。


今になっても、なぜあの日、彼女が怒ったのかわからない。
ただひとつ言いたいことがあるとすれば
「申し訳ない。」という言葉だけである。